Neutral 〜ニュートラル

50歳のうめめだかが感じたことやオフタイムのこと、好きな物のこと、趣味etcについてひとりごつ。  SINCE 2005.7.12

”午前4時、東京で会いますか?”

200710_001 なんてロマンティックな題名なんだろうと思って...。本屋で偶然に手にとってしまいました。

先日の神田古本まつりのブログの時に、本との出会いについて少し書きましたが、この本のロマンティックな題名に惹かれて、そして、男女2人の往復書簡というスタイルの本というのも好きなので、なんとなく買ってしまいました。

パリ在住の中国人でフランスの小説家であるシャンサ♀と、日本在住でフランス人のシャネル日本法人の社長であるリシャール・コラス♂のフランス語で書かれた往復書簡を(もちろん日本語に)訳した本です。

最初はロマンティックな題名に惹かれた私は、多分『錦繍』のようなちょっと切ないよう往復書簡なのかと思っていたのですが、それは違いました。

はじめはシャンサの生まれた中国とリシャールの過ごしたモロッコとフランスについて書かれて、どちらかというと比較文化論的な本だと思っていましたが、実体験に基づく話はとてもリアルに伝わってきて、中国とフランスで時代も生まれた場所も違う二人なのに共感できる、そんな何かがあるのです。そして、文化大革命の頃、それの余波を歪曲しながら受けた、離れたヨーロッパにあるフランスについては興味深くもあります。

”本との出会い”ということに話を戻すと、たまに偶然かもしれませんが、中身を全く知らない本なのに、今気になっていることがちょうど本に出てきたり、まるで自分と同じタイプの人が出てきたり、時には同じ悩みを抱えている主人公が出てきたりして、今の自分が読むべくして読んだという本に出会うときがあります。まるで第六感が働くようです。

この本もそんな第六感を感じる本でした。本を開いた瞬間にホテル・ルテシアで2人がこの本の打合せをしたという行。ついこないだある人が私にパリのホテル・ルテシアの話をして、私はパリのホテル・ルテシアがどこにあるか知らなかったので、ちょうど調べていたところだったのです。その人の話すことは私にとってはいつも気になることなので、なんだかちょっとしたことなのですが、他ならぬ縁みたいなものを感じたのです。

あともう一つは北京出身のシャンサですが、彼女のお祖母さんが満州に住んでいて、彼女はかつて日本将校が住んでいたというお祖母さんの家や満州から日本文化と触れあっていたのでした。私の祖父母は満州に行っていたという話をよく聞かせてくれました。日本が太平洋戦争で焦土化していく中で、満州は近くにソビエトの脅威があったものの、祖父母は満州人の人の温かさに触れ、引揚げ船に乗るとき以外の満州での生活は祖母曰く、とても穏やかで豊かな生活だったと言っていました。私は祖母から戦争の恨み言も中国や中国人の悪口を聞いたことはありません。ただ記憶に残るのは満人(祖母はそう言っていました)の人に本当によくしてもらったという言葉ばかりです。

シャンサと私自体が同世代で、満州国のことも知らない世代なのですが、そのシャンサの祖父母の話から、私の祖父母(もちろん父も)生きた満州というところを私もシャンサが感じたように、感じ知りたいと思うわけです。

そんな風に、この本は私に読まれたかったのではないかと思い、この本に出会ったことに少なからず縁を感じるわけです。

皆さんもそんな体験があるのではないでしょか?この本をさらに読み進めるのが目下の私のささやかな楽しみです。