ちょっと大人な絵本。
先日、フローベールの『ボヴァリー夫人』の絵本を買いました。というか、Amazonのマーケットプレイスでボヴァリー夫人を買おうと思って見ていて、絵本とは思わずに買ってしまったんです。
ですが、これがなかなか。文は姫野カオルコさんで、絵は木村タカヒロさん。木村さんの絵は色鮮やかに素敵で、姫野さんの文は現代的にアレンジしていて、ポイントをおさえていて、さらに心に突き刺さる。
帯に”ちょっと大人な絵本。”と書いてあるんですが、ほんとに大人の絵本です。
あらすじは、184X年のフランス。のちにボヴァリー夫人になるエマは女子だけの寄宿舎で学校生活を終え、温和で免許医になったシャルルと結婚した。結婚生活は田舎の町トストで始まった。ボヴァリー夫人は田舎での退屈な生活と、冴えない夫を愛すことができずに、辟易しながら毎日を過ごしていた。
ボヴァリー夫人は妊娠した。夫のシャルルは妻の気持ちが晴れるようにトストよりも少し町であるヨンヴィルに引っ越した。そこでボヴァリー夫人は丘の上で一人で読書したり、ドイツ音楽に胸打たれる孤独な青年レオンと出会った。彼も彼女に憧れた。レオンは彼女にとって「絵や詩や音楽について話せる異性」だった。ヨンヴィルも彼と並んで歩いただけで不道徳とされる地方の町だった。レオンは法律事務所で修行するとパリに旅立った。
そんなときに、夫のところに急患で運ばれた男の主人である町外れの大邸宅に住むロドルフ・ブーランジェと出会う。遊び人ともっぱらの噂の男。舞踏会の日に彼はボヴァリー夫人を誘惑した。ロドルフには簡単なことだった。ボヴァリー夫人とロドルフは逢瀬を重ねた。
ボヴァリー夫人は本気で彼を愛し、逃避行を提案した。ロドルフは厄介なことになったと思っていた。逃避行の当日、彼女はロドルフからの長い手紙を受け取った。彼は彼女と逃避行しなかった。ボヴァリー夫人は失意の中にいた。
夫のシャルルはふさぎ込む妻を心配し、彼は興味のないオペラであるが、ルーアンまで妻を連れ出した。そこでレオンと再会した。レオンはパリで洗練されていた。あっという間に火がついた。ボヴァリー夫人はピアノを習いに行くといい、ルーアンに毎週出かけ、レオンと愛を確認しあった。
しかし現実が待っていた。ボヴァリー夫人は人妻で、シャルルが相続した遺産を抵当にいれてまで浪費を繰り返していた。夫のシャルルは鈍感にも自分を許すだろうとボヴァリー夫人は思ったが、薬剤師の家に忍び込み毒薬を飲んで、自ら命を絶った。
それでもシャルルは妻を愛し、亡骸にすがって泣いた。半年後に彼も亡くなった。
こんな因果応報の話。最後にこんなセリフがある。
”わたしはただ境遇に身をまかせ、
境遇の波に自分の夢をさらわれてしまった。
失うだけの人生だった。
自分で拓くことなど何もせず。”
読み終わったあとに、ふーむと思う話です。1840年代も2008年の今も人間のすることはあまり変わらないなと思ってしまいました。
予想以上に、いい本でした。オススメです。