『神様のボート』
先日、江國香織さんの『ウエハースの椅子』を読みましたが、そのあとすぐにこの『神様のボート』を読みました。
主人公は草子という少女とそのママである葉子。二人の考えていることが交互に展開されるという形で描かれています。
昔、桃井先生と結婚していたママは”あのひと”と”骨ごと溶けるような恋”をして、桃井先生と短い結婚を終わりにして、草子を産んだ。「俺はかならず葉子ちゃんを探し出す」といった草子のパパである”あのひと”を待って引越しを繰り返す。でも東京を離れてほしいといった桃井先生との約束を守って、東京を16年離れて転々としていた。
そんな風にして二人で生きていたが、やがて草子が高校で寮に入ることになり、二人は転機を迎える。ママは東京の桃井先生に約束を守れないことを言いに行き、東京に戻ることを決めた。
そのあとは書きませんが、とても静かでありながら、甘くもありながら、葉子のストイックさにちょっと危険な匂いも感じる小説です。それにしても”骨ごと溶けるような恋”という表現がなんとも甘やかで、素敵だと思いました。”あのひと”に再び出会うまで、馴染まないように生きる葉子は狂気でもある訳だけれども、そんな風に生きられる葉子の人生を羨ましくも思ってしまう人も多いのではないかと思います。
これを読んだら、この小説が私の中での江國作品のNO1に躍り出ました!
ちなみに、私の中での江國作品のランキングは(あくまでも今のところですが)
第1位 神様のボート
第2位 ウエハースの椅子
第3位 東京タワー
になりました。勝手ながら...。
『神様のボート』を読み終わって、今ネタ帳に使っている黄緑の小さいノートに読書感想文を書いて、その二日後の4月3日深夜に突然産気づいて、病院に直行。吸引分娩をせざる得なくなりましたが、朝8時過ぎに無事に男の子を出産しました。
この子がずっとお腹の中で辛抱していた子なんだと感慨深いものがありました。赤ちゃんってものが、ちゃんとは想像できていなかったのですが、想像以上に可愛くて、スポイルし過ぎないように...と早々と心配もしています。もし私が神様のボートに乗ることがあったらこの子と乗るんだなって思いました。
心配していただいた皆さんに本当に感謝しています。ご報告まで。
←『神様のボート』にも出てくる北の丸公園の入口からの桜